今回のコラムでは、二重埋没法が取れて手術前の状態に戻るメカニズムと、取れにくくするために当院で行っている工夫についてお話したいと思います。
二重埋没法が取れる本当の理由知っていますか?メカニズムと当院独自の工夫を公開
目次
埋没法が取れる原因
・二重埋没法が取れて戻ってしまうのはなぜなの?
・糸で組織が切れるとはどういうことか
・誤解によって行われている残念な行動
埋没法を取れにくくするには?
・埋没法を取れにくくするために重要なこととは
・埋没法を取れにくくする工夫その1
・埋没法を取れにくくする工夫その2
・まとめ
埋没法が取れる原因
二重埋没法が取れて戻ってしまうのはなぜなの?
皆さんは、二重埋没法の二重のラインが戻ってしまう原因は何だと思いますか?
カウンセリングの際に患者様に聞いてみると、「糸が伸びて緩んでいるのではないか」「糸が切れしまっているのではないか」と答える方が多いです。

もちろん、術後に糸が切れたり、結び目がほどけて二重ラインが戻ってしまう可能性もゼロとは言い切れないのですが、そのようなことはほとんど起きません。埋没法が取れてしまう場合は、数年かけてゆっくり幅が狭くなっていく場合が多く、糸が切れてある日突然二重のラインが消失するということは、とても珍しいことなのです。
私は埋没法の埋没糸を抜糸した経験がたくさんあるのですが、二重ラインが消失していたとしても、糸が伸びていたケースというのは見たことがありませんし、糸が切れていることもほとんどありません。埋没糸は手術直後の状態のまま、まぶたに埋まっているのです。

上の写真は埋没からかなり年数が経過してから抜糸した埋没糸です。糸は透明化していたものの、結び目もあり、切れているわけでも、緩んでいるわけでもありませんでした。
糸の状態が変わっていないのにも関わらず、二重のラインが手術前の状態に戻ってしまう現象を医学的に説明できるとすれば、それは1つしか考えらえません。
「まぶたの組織が糸に縛られた張力に耐えられず、切れて(カッティングして)糸からだんだんはみ出してしまう」からです。つまり、切れているのは糸ではなく自分の組織だということです。
埋没糸が変化している稀なケース

上の写真は、結び目の部分が消失していたり、ほどけていたケースです。よく見ると、結び目付近が透明化して、さらに糸が先細りしています。現在では、ポリプロピレン、ポリビニリデンなど長期間劣化しにくい素材の埋没糸を使用するのが主流ですが、以前はナイロンを用いるのが一般的でした。ナイロン糸は長期の経過で加水分解されて色が抜けたり、場合によっては結び目が溶けてしまうということもある糸なのです。
この様に、古い埋没糸が加水分解されることで埋没法が取れてしまうということももちろんありますし、埋没法を受けたばかりでも、何かの拍子に結び目付近に負荷がかかって糸がプチっと切れていしまうということも無いわけではありません。
このようなケースは珍しいことなので、今回のコラムでは「組織のカッティング理論」について詳しく解説していきます。
糸で組織が切れるとはどういうことか
想像してみてください。キュウリを細い糸で縛っても、多少、皮が糸で食い込むかもしれませんがキュウリが切れることは無いですよね。でも、熟したメロンの実なら糸をピンと張って押し付けただけで切れてしまうと思いませんか?人体の組織は柔らかいので、埋没法はどちらかと言うと、キュウリの様な硬い野菜を縛る手術ではなく、メロンの柔らかい実を糸で縛る手術だと考えてください。だから、単に柔らかい実の部分を糸で縛るだけだと切れて戻りやすいというのはある意味あたり前のことなのかもしれません。

上の写真は糸で柔らかいネリ消しを縛っています。軽くしばるとネリ消しの表面が少し食い込むだけですが、強く縛るとネリ消しは糸で切れてしまいます。埋没法が徐々に戻っていく過程で、人体でも似たようなことが起きていると考えられます。
誤解によって行われている残念な行動
この理屈を理解していないドクターも実は多く、「二重が長持ちするために丈夫な糸を使っています」とか、「糸の負担を減らすために点数を多く留めた方が長持ちします」などと言って、丈夫な糸で4点留める埋没法などを勧められる場合があるのもよく耳にしますよね。
関連コラム:二重埋没法は何点留めが良いの?点留めと線留めの違いとともに解説します

また、「長持ちさせるためにきつく縛っておきました」という様なことを言うドクターもいますが、糸をきつく縛ったら、逆効果になることは「ネリ消しの実験」を見れば明らかですよね。
埋没法を取れにくくするには?
埋没法を取れにくくするために重要なこととは
埋没法が取れる原因は、糸ではなく自分の組織が切れてしまうことでしたよね。つまり、丈夫な糸を使うことや(※)、糸に負担がかからないようにという配慮は不要であり、①切れにくい丈夫な組織に留めることと、②組織にできるだけ負担がかからないように留めることこそが、埋没法を長持ちさせる上で重要なのです。
※長期間劣化せずに張力を維持できる糸を使用することは重要

埋没法を取れにくくする工夫その1
では、埋没法を取れにくくするために、当院がどのように工夫をしているかをご説明いたします。
まず、①「切れにくい丈夫な組織に留めること」についてです。埋没法は粘膜側と皮膚側を糸で縛って二重のラインを作る手術です。従って、糸を通す過程で丈夫な組織に留めることが、二重を取れにくくする対策になります。メロンで例えると、メロンの実ではなくて皮に糸を留めるということです。メロンの皮に相当するのが皮膚にある真皮という線維性の丈夫な組織です。皮膚は柔らかいので、そんなに丈夫な組織があるのかイメージしにくいと思いますが、革製品をイメージするとわかると思います。革は動物の真皮です。
通常、埋没法は糸を通しやすくするために、皮膚を切開するのですが、この際に真皮も切れてしまいます。真皮を切ってしまうと真皮に糸がかからなってしまうのです。従って、当院では真皮にしっかり糸をかけるために、皮膚を全く「切らない」埋没法を採用しています。 切らない埋没法については、以前のコラムを参考にして下さい。

埋没法を取れにくくする工夫その2

また、②「組織にできるだけ負担がかからないようにすること」については、糸で囲んだ組織の量、上の図で言うと糸で囲んだ面積をできるだけ大きくすれば、組織が切れにくく二重が取れにくいと考えられます。
当院では、糸で囲んだ面積をできるだけ大きくし、かつデザイン性も重視した留め方である線留めを採用しております。また、線留め点留めと違い糸が長いため、組織が糸で強く縛られることがありません。つまり、組織に対する負担が小さく、組織が糸によってカッティングしにくいと言えると思います。埋没法の糸の留め方の種類については、以前のコラムを参考にしてください。
まとめ
以上をまとめると、埋没法が取れてしまう原因は、糸で囲んだ組織が糸の張力で切れてしまう(カッティング)ことであり、できるだけ埋没法を長持ちさせるためには、切れにくい真皮という丈夫な組織にしっかり糸を固定することと、線留めという組織に負担がかかりにくい術式で手術することが重要です。

コラム著者

大手美容外科TCB東京中央美容外科で約10年間勤務。仙台駅前院院長、新宿三丁目院(TCB本院)院長・東京都エリア総括院長を歴任。TCBでは技術指導医部門のトップ・二重整形教育最高責任者として、指導的な役割を務めていた。YouTubeなどで美容整形に関する情報発信に積極的で、その内容がテレビ、雑誌、ネットニュースサイトなどに多数取り上げられた。豊富な症例実績を背景に10年間で培った技術を適正価格で提供する手術専門クリニックを2025年、地元仙台に開業した。
症例数:二重手術1万件以上、クマ取り手術5000件以上、糸リフト・切開リフト5000件以上、下肢静脈瘤3000件以上
資格:外科専門医、脈管専門医
学会発表・論文:経結膜的埋没法重瞼術の抜糸法の要点と成績
詳しい経歴・プロフィールなどはドクター紹介をご覧ください。