「二重埋没法の手術を5日前に受けました。希望した幅より広いのですが、これは失敗ですか?その場合、できるだけ早く抜糸したいのですが、術後何日から抜糸可能でしょうか?」
これ、二重手術を受けたほとんどの患者様が抱く不安とか疑問とかが反映された質問なんですよね。ネット上の質問サイトとか、SNSとか、こういう内容の質問や不安の声があふれていますよね。

心配な気持ちは凄く良くわかるのですが、そもそもこの質問自体が間違いなんですね。
「質問自体が間違い?どういう事?」と思われている方がほとんどかと思います。今回のコラムでは、なぜこの質問が間違いなのか、解説していきます。
二重整形後の一般的な経過と修正について
二重手術後に幅が広いのは通常経過
そもそもの話なのですが、二重手術を受けて術後幅が広いのは通常の経過です。二重手術後は、まつ毛と二重のラインの間が腫れます。するとその腫れが邪魔になって少し目が開きにくい状態になります。まぶたが下がって少し眠そうな目になっているイメージです。鏡を見て目線を少し下に向けてみましょう。そうすると、まぶたが下がって二重幅が広くるのがわかると思います。つまり、術後腫れによってまぶたが下がっているということは、二重幅が広くなるということなんです。

ということは、二重手術をすると全ての人が腫れている状態になるので、全ての人が術後幅が広い状態になります。従って、術後に幅が広いのは通常経過と言えます。
「二重整形術後数日、幅がちょっと広い」というのは、二重手術を受けたわけだから、当たり前のことなのです。
下の写真は、二重切開法を受けた方の術後の経過です。術直後の幅が1番広く、腫れが引くに従い徐々に幅が狭くなっていくのがお判り頂けるかと思います。ここまで極端ではありませんが、埋没法でも同様に腫れが引くに従い幅が狭くなっていきます。

※術後1ヶ月の写真は少し笑ってしまっているので、本来もう少し目の開きは良く、二重幅も狭い可能性があります。
ダウンタイム中に幅が広いのは通常経過なので修正対象ではない
当院では、二重整形手術を受ける全ての患者様に術後は希望より幅が広い状態が続くことを説明します。手術が終わった後にも説明します。それを説明して納得した上で手術を受けてもらいます。なので、冒頭の「術後5日で幅が広いから修正したい」とか、「失敗では?」というのは、本来おかしな話なのです。
では、どのくらい幅が広い状態が続くのかというと、大体2~3ヶ月と説明しています。これは埋没法の話です。切開法であれば、半年~1年と説明しています。その期間はダウンタイムなので幅が広くても我慢して下さいとお話ししています。
参考コラム:整形失敗する人の特徴第1位「ダウンタイム中に修正する人」
ただ、その期間かなり広い状態がずっと続くわけではありません。個人差もあるし、術後の内出血の有無にもよりますが、埋没法なら数日~1週間でかなり腫れが落ちつく方がほとんどです。逆に、腫れが強かったり、まぶたの状態や設定の幅によっては2~3週間経っても結構腫れが目立つ方もいます。それでも、2~3ヶ月経てば全ての腫れが引いて二重のラインは完成します。
もし、抜糸してやり直したらどうなるの?
「二重手術の術後は、腫れによって希望より幅が広い状態が続きます」という様な説明は、全ての患者様になされるべきだと私は思います。それにも関わらず、「術後1週間なのに幅が広い」、「抜糸したい」という投稿がネット上には溢れています。それはなぜなのか、もちろんクリニック側からの説明が不十分ということもあるでしょう。

ただ、仮にクリニック側の説明が不十分だったとしても、術後5日の腫れた状態で抜糸するというのは違うんですよ。抜糸するということは、その後の修正を考えている場合が多いですよね。では、仮に術後1週間で抜糸するとしましょう。その後、修正手術を受けたとしましょう。修正手術したら、また幅が広い状態になりますよね。その時、また抜糸しますか?という話です。無限修正ループになると思いませんか?
本当に心配すべき状況とは?
では逆にSNS等で、「数日前に、二重の埋没法手術を受けてきました!!既に理想の二重になりました、〇〇先生ありがとうございました」こういう投稿見たことありませんか?

こうした投稿の一部はそもそも手術を受けていないサクラの投稿の可能性があります。また、実際に手術を受けた患者様の投稿だとしても、もし術後数日で理想の二重になっていたら、その後狭くなる可能性が高いですよね。つまり、そういう方こそ本当は「私の手術は失敗なのでは?」と心配すべきなのです。
※もちろん、術後数日でほとんど腫れが無く、幅が完成に近い状態になることもあるので、必ずしも失敗ではありません。
どんなにつらくても、抜糸はしてもらえないの?
以上を踏まえまして、当院では術後数日~数週間で単に「幅が広いから抜糸したい」という理由では抜糸の対応はしておりません。ただ、どうしても腫れている自分を受け入れられないとか、社会生活に支障があるので抜糸したいとか、そういう切実な事情がある場合は抜糸の対応もしております。抜糸後にダウンタイムを取れるところで再度の修正手術にも対応致します。

早く抜糸しないと、癒着して抜糸できなくならないの?

また、患者様が抜糸を急ぐ理由として、「早く抜糸しないと、糸と皮膚が癒着して元に戻らないのではないか」、そういう勘違いが挙げられます。糸が癒着して取れなくなることは医学的にあり得ないことで、1年経とうが10年経とうが、糸さえ見つかれば簡単に抜糸できます。

もう1つの理由として、「皮膚と粘膜が癒着して、抜糸してもラインが元に戻らないのではないか」、というの勘違いもあります。
いずれも勘違いであり、そういうことはまずありません。私は埋没法の抜糸の経験がかなり多い方ですが、抜糸して二重のラインが元に戻らなかったケースは1回もありません。従って、抜糸すれば元の状態に戻ると思ってください。
早く抜糸しないと「糸が癒着して取れなくなる」、「二重のラインが癒着して元に戻らなくなる」ということは勘違いであり、そのようなことは無いのでご安心ください。
抜糸は凡人美容外科医にとって難易度が高い
埋没糸は何年経っても見つかるのかというと、それは見つからない場合ももちろんあります。それは、糸自体が透明になって行くからなんです。年数が経ってしまうと私でも抜糸が難しい場合もあります。ただ、多くの場合、糸自体が透明になっても、結び目のところは色が残っています。そのかすかな結び目の色を頼りに、糸がありそうなところを探すと、実際に見つかることがほとんどです。私は、20年以上経過した埋没糸を抜糸したこともあります。

しかし、埋没法の抜糸は美容外科の手技の中で最も難しい手技の1つです。そもそも、私がすぐに見つけらるような糸でも、多くの美容外科医にとって見つけること自体が難しいのです。従って、大きく皮膚を切って糸を探す美容外科医もいるのですが、それでも見つけられないことも多いのです。
「早く抜糸しないと癒着して糸が取れなくなるんじゃないか」と勘違いしている患者様が多いのは、その様な情報を発信している美容外科医がいることと、実際に抜糸をトライして抜糸できなかった時に、「抜糸できたけど、皮膚が癒着していて元に戻りません」とか、「糸はあったけど糸が癒着して抜糸できませんでした」という説明をしている美容外科医がいるからなのです。
埋没法の糸は、ナイロン、ポリプロピレン、ポリビニリデンなどの素材でできています。これらの埋没糸はツルツルであり、人体の組織と癒着することは絶対にありません。従って、「糸が癒着して抜糸できない」ということは絶対にないので、もしそう言われたら嘘だと思ってください。
なぜそんなことが言えるかというと、「癒着して糸が取れませんでした」という患者様が私のところにたくさん来るからなのです。診察すると、すぐに糸が見つかり、全く癒着していない糸をするりと抜糸できてしまうのです。要するに、抜糸できなくて元に戻らないという人は、そもそも抜糸ができていないの可能性が高いのです。
二重埋没法の抜糸について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
質問に対する回答とまとめ

話がそれてしまいましたが、
「二重埋没法の手術を5日前に受けました。希望した幅より広いのですが、これは失敗ですか?その場合、できるだけ早く抜糸したいのですが、術後何日から抜糸可能でしょうか?」
とういう質問に回答するのであれば、
「二重整形術後数日で二重幅が希望した幅より広いのは通常経過であり、幅が広い、左右差があるなどで悩んでいる方は、2~3ヶ月待てば多くの場合治ります。術後何日で抜糸が可能かについては、いつでも抜糸可能です。術直後でも、1週間後でも、どのタイミングでも抜糸可能です。ただ、希望の幅より二重幅が広いという理由での抜糸については、腫れが引くまで待つことをお勧めします。」
というのが答えです。また、冒頭で私が「質問自体が間違い」と言った理由はここまで読んだ方ならわかりますよね。まとめると以下が「質問の間違い」についての解説です。
二重埋没法5日後に希望した幅より広いのは当たり前であり、術前・術後に説明した通りの経過です。失敗と言うより、「成功している可能性がある」経過であり、もし術後5日で希望の幅になってしまっていたらその時こそ「失敗しているのではないか?」と心配すべき状況なのです。「できるだけ早く抜糸したい」というのも、「早く抜糸しないと糸や二重ラインが癒着して、抜糸ができなかったり、ラインが元に戻らないのではないか」という勘違いから来る杞憂なのです。また、仮に抜糸して修正手術を受けたとしても、術後に希望より幅が広くなるのは同じなので、抜糸と修正の無限ループになってしまいます。これが、この質問が抱えたの最大の矛盾であり、「間違い」と言えるでしょう。
コラム著者

大手美容外科TCB東京中央美容外科で約10年間勤務。仙台駅前院院長、新宿三丁目院(TCB本院)院長・東京都エリア総括院長を歴任。TCBでは技術指導医部門のトップ・二重整形教育最高責任者として、指導的な役割を務めていた。YouTubeなどで美容整形に関する情報発信に積極的で、その内容がテレビ、雑誌、ネットニュースサイトなどに多数取り上げられた。豊富な症例実績を背景に10年間で培った技術を適正価格で提供する手術専門クリニックを2025年、地元仙台に開業した。
症例数:二重手術1万件以上、クマ取り手術5000件以上、糸リフト・切開リフト5000件以上、下肢静脈瘤3000件以上
資格:外科専門医、脈管専門医
学会発表・論文:経結膜的埋没法重瞼術の抜糸法の要点と成績
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