今回は、二重埋没法で使用する糸のお話です。二重埋没法は、糸でまぶたを縫って二重の線をつくる手術なのですが、糸にはいくつか種類があるということをご存じですか?
「埋没の糸に種類があるなんて知らない」
「種類は違うかもしれないけど、どこのクリニックでも細くて丈夫な糸を使ってるから大丈夫なのでは?」
と考えている方が大半だと思います。

実はですね、全然大丈夫じゃないんです。これから受けようとしているクリニックが使っている糸、あるいはもう受けてしまった埋没法の糸、本当にそれで大丈夫ですか?まさか、何の糸を使っているか知らないなんてことないですよね?
はい、とういうことで、今回は二重埋没法の手術で使用されている代表的な糸についての解説です。
埋没糸はクリニックや術式によって違います。3種類の糸の違いを徹底解説します。
目次
二重埋没法で使用される糸
・二重埋没法の糸の種類は3つ
・ナイロン
・ポリプロピレン
・ポリビニリデンフルオライド
・アスフレックスとポリプロピレンの比較
最後に
・注意喚起と当院の考え
二重埋没法で使用される糸
二重埋没法の糸の種類は3つ
二重埋没法の縫合糸は、一般的にモノフィラメント(撚り糸ではない1本のつるつるした糸)の非吸収糸(生体内で溶けない糸)が用いられています。そして、青や黒い色をしているのが一般的です。色がついているのは、万一抜糸が必要になった場合に糸を見つけやすくするためです。
これらの条件を満たす糸で、二重埋没法に使われている糸の素材は、ナイロン、ポリプロピレン、ポリビニリデンフルオライドの3つです。ほとんど全てのクリニックの埋没法には、この3つのいずれかの素材の縫合糸が使われています。

ナイロン
まず、ナイロン(nylon)についてです。ナイロンは、1930年代に発明された合成繊維であり、1940年代に非吸収性の縫合糸として実用化され、広く医療で用いられています。
主に、抜糸を前提としたキズの縫合に使われるのが一般的ですが、安価なことから埋没法用の縫合糸として現在でも多くのクリニックで採用されています。例えば、広告に出てくるような数万円で受けられる埋没法の糸は、まずナイロン糸が使用されていると考えて間違いありません。
ナイロン糸は非吸収糸に分類されてはいるものの、生体内で加水分解されて劣化してしまうことが知られています(参考文献参照)。
参考文献
東 隆, 平山 統一, 三隅 寛恭, 下川 恭弘 ほか
“Rupture of Anastomotic Pseudoaneurysm Due to Degradation of Monofilament Vascular Suture Material 15 Years After Surgery: A Case Report”
[術後15年目にモノフィラメント血管縫合糸の劣化を認めた吻合部仮性動脈瘤破裂の一例]
日本血管外科学会雑誌 (The Japanese Journal of Vascular Surgery). 2007;16(4):619-623.
DOI: https://doi.org/10.11401/jsvs.16.619
Medical Online / J-STAGE
私は、美容外科医として10年以上のキャリアがあり、埋没糸の抜糸の経験が豊富なのですが、抜糸時にナイロン糸と思われる糸が劣化してぼろぼろになっていたり、結び目がほどけたり消失していたり、糸の一部が溶けてしまって細くなっているという現象をたくさん目の当たりにしてきました。これでは、糸の張力が維持できないのでラインが薄くなったり、取れてしまうことでしょう。

また、糸の色が脱色して透明になってしまう現象もよく見られます。透明になってしまうと万一抜糸が必要な場合でも抜糸が難しかったり、糸が見つからないということにもなりかねません。
ナイロン糸は安価で使いやすい糸ですが、やはり抜糸前提のキズの縫合に用いるのに適した縫合糸で、現代の美容医療においては埋没法に用いるべきではないと私は考えています。
ナイロン糸を使用した埋没法は「安かろう悪かろう」の商品の典型であり、ご注意下さい。

ポリプロピレン
続いてポリプロピレン(polypropylene)についてです。
ポリプロピレンは、1950年代に開発された素材で、1960年代にはナイロンに代わる強靭で組織反応が少ない非吸収糸として医療に用いられるようになりました。私が以前勤務していた心臓血管外科でも、血管縫合や心臓の縫合によく使っていました。これらの縫合に劣化するナイロン糸を使用することは絶対にありません。美容外科でも、ナイロンに代わる強靭な素材として高価格帯の埋没法で使用されるのが一般的となっています。
しかしながら、数年経過したポリプロピレン糸を抜糸すると、ナイロン糸と同様に糸が脱色していたり、糸が細くなるなどの現象が観察されたこともあることから、私はポリプロピレン糸であっても生体内で経年劣化していくものと考えています。
ポリビニリデンフルオライド
最後に、ポリビニリデンフルオライド(PVDF:polyvinylidene fluoride、ポリフッ化ビニリデン)にいて解説します。
ポリビニリデンフルオライドは1960年代に工業化されたフッ素樹脂です。1960年代後半から医療に用いられるようになり、ポリプロピレン同様に生体適合性が強く、強靭な非吸収糸として広く普及しています。日本では、河野製作所の「ASFLEX(アスフレックス)シリーズ」が有名で、当院ではアスフレックスの強度をさらに高めた「ASFLEX⁺(アスフレックスプラス)」を業界に先駆けて全ての埋没法で採用しています。

(株式会社 河野製作所より使用許諾済み)
アスフレックスとポリプロピレンの比較
アスフレックスは長期にわたり劣化しにくいという特性があり、ポリプロピレンが3年半後に77%の張力を保持するのに対し、アスフレックスは93%、9年後ではポリプロピレン53%に対してアスフレックスは92.5%を維持しているというデータもあります。

(株式会社 河野製作所より使用許諾済み)
実際、埋没の数年後にアスフレックスの糸を抜糸した経験が何度もありますが、全く脱色が見られず、劣化もしていませんので、ポリプロピレンよりもアスフレックスの方が、さらに長期にわたり二重のラインを維持できるのではないかと考えています。

最後に
注意喚起と当院の考え
この業界でよくあるのは、糸の種類で料金に差をつけて、いわゆる「広告の品」である3万円の埋没法はナイロン、15万円の埋没法はポリプロピレン、30万円の埋没法はアスフレックスなど、糸の種類で価格差を付けたり、アスフレックスは1本1万円のオプションになっていたりするのですが、当院では料金や術式によらず全ての埋没法でアスフレックスプラスを採用していますので、ご安心ください。

劣化することが分かっている糸を敢えて採用して安い金額で患者様を集めるということはせず、長期にわたって劣化しにくい良い糸しか使わないというのが当院のスタイルです。
当院の埋没法に興味がある方は、無料カウンセリングを行っておりますので、ご来院ください。
コラム著者

大手美容外科TCB東京中央美容外科で約10年間勤務。仙台駅前院院長、新宿三丁目院(TCB本院)院長・東京都エリア総括院長を歴任。TCBでは技術指導医部門のトップ・二重整形教育最高責任者として、指導的な役割を務めていた。YouTubeなどで美容整形に関する情報発信に積極的で、その内容がテレビ、雑誌、ネットニュースサイトなどに多数取り上げられた。豊富な症例実績を背景に10年間で培った技術を適正価格で提供する手術専門クリニックを2025年、地元仙台に開業した。
症例数:二重手術1万件以上、クマ取り手術5000件以上、糸リフト・切開リフト5000件以上、下肢静脈瘤3000件以上
資格:外科専門医、脈管専門医
学会発表・論文:経結膜的埋没法重瞼術の抜糸法の要点と成績
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